部屋で無になる日
離婚の痛みを消す方法としては、みんなに平等に訪れる時間の流れ、
そして仕事に打ち込むというのはよく聞く話である。
確かにそうなんだろう。
実際仕事が忙しい瞬間は忘れられているときもある。だが…
だがふとした瞬間に突然彼女の笑顔を思い出してしまう。
電車に乗っても人の手を見てしまい指輪をみてうつむく。
今日は嫁がいなくなって初めての土曜日だ。
デートしてくれる女性がいるが僕は妻とデートがしたいんだ。
彼女には申し訳ないが嫁さんがいないつらさを少しでも和らげるためだ。
しかし事あるごとに嫁さんを思い出してしまう…
離婚は僕の36年の人生で一番ショックな出来事だったと思う。
でも生きている。生きていれば嫁と再び一緒になれる可能性があるから生きている。
じゃあそれが絶たれたら？・・・・・・・どうするのだろうか？
嫁とまだ仲が良かった頃に
「たとえ別れる事があっても結局戻ってくるんじゃなかなぁ」
と言っていたのが忘れられず夜空を見上げる。
このままではいけない。それは理解している。
もともと自分の発言に責任は一切持たない女だった。
そんな発言はあてにできない。
僕はほぼ無い可能性を信じて生きるようなニンゲンだっただろうか？
無いものは無い、と割り切って生きていくニンゲンだった気がする。
考えても仕方がない。考えても意味がない。涙が出るが目から水を
まき散らしたところで嫁が返ってくるわけでもない。
そもそも3年前までは嫁は僕の人生に居なかったんだ。
つまりは、いなくても生きていけるのだ。
今までもこうやって理屈で心を殺してきた。
これはもう一種の病気なのかもしれないけど僕の変えられない生き方でもある。
Non-Fiction Stories…はじまります、
なぜ？
どうしてこんなことに？
どうしたらこんな事態を回避できたのか？
離婚した人はこうやって脳内で終わりのない、コタエも出ないタラレバ物語を展開する事もよくあると思います。
僕が妻と離婚に至った経緯とかそういうのは多分他の人とそんなに大差ない
と思います。大きく分類するといわゆる価値観の違いって奴です。
円満に離婚してお互いバイバイって感じでした。
離婚直前は離婚直後が怖くて仕方がなかった。
これから寂しさに潰されずに生きていけるのか。
楽しかった日々、妻の笑顔を思い出すと涙がこみあげてきて
毎日毎日刃物で切り刻まれるような痛みを感じる。
生きていけるのだろうか…生きているのだろうか。
帰宅したら妻が少しはにかんだ顔で出てくるのではないか？
しかしカギを開けるとそこに広がる現実はぽっかりと口を広げた闇。
まるで自分の心の闇のように誰もいない。音もしない。
帰宅するたびに心が打ち砕かれその場に崩れ落ちそうになる日々が続いた。
この辺の感覚は人によるし離婚理由によると思います。
悲しむときは悲しめばよいと思うし、そういう時は
恐らく悲しむ意外にできる事は殆どないと思います。
ニンゲンって奴は一定以上の強い衝動に太刀打ちできない様にできている。
あまり感情の起伏がなかった僕の人生観は36歳にして大きく変わる事になった。
妻と一緒に過ごした期間は交際期間を含めわずか3年。
短いような長いようなそんな時間。
そして僕たちはその期間に終止符を打った。
僕は再び独りになった。
